日本で開発、確立された優れたI型糖尿病のモデル動物であるNODマウスを用いて、本疾患に出現する多様な液性及び細胞性免疫異常の病因的解析を行ない、以下の知見を得た。 1.NODマウス脾細胞を用いた細胞融合法により膵ラ島細胞膜抗体(ICSA)の単一クローン性抗体を作製した。本抗体を用いて以下の知見が得られた。 (1)本抗体に対応する膵ラ島細胞膜抗原は分子量64Kと105Kの糖蛋白として同定された。 (2)本抗体はキラー細胞を介したラ島傷害性(ADCC)やインスリン分泌抑制作用を有し、I型糖尿病の発症に関与しうると考えられた。 (3)本抗体に対する抗血清は抗イディオタイプ抗体を含み、この抗血清の投与により、NODマウスの膵ラ島炎が抑制された。 2.NODマウスに認められる種々の細胞性免疫異常の病因的意義について解析し以下の知見が得られた。 (1)本マウス脾細胞中に活性化マクロファージが存在し、T細胞の反応性を抑制している可能性が示唆された。 (2)本マウスにおいてはサプレッサーT細胞の機能低下が存在し、この原因としてインターロイキン2レセプターの発現が低下していることが関与していると思われた。 (3)NODマウス膵ラ島破壊に細胞傷害性Tリンパ球が直接的なエフェクター細胞として機能していると考えられた。 以上より、I型糖尿病の発症は単一の機構によるものではなく、種々の免疫担当細胞の関与により段階的に進行するものと考えられた。
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