研究概要 |
バセドウ病の成因として自己免疫応答反応が重要視されている. 甲状腺細胞内にリンパ球に浸潤がみられ, これらリンパ球から放出されるリンホカインによる影響が注目されている. 自己免疫応答に重要な役割を演じているとされる甲状腺細胞表面へのDR抗原の発現もこのリンホカインの一つ, インターフェロンrによることが推測されている. そこでこの自己免疫応答に関与しているリンホカイン, DR抗原がバセドウ病の発現, すなわち, 甲状腺から多量のホルモンの分泌を促進さすように作用しているのかどうか検索した. 手術で得られたバセドウ甲状腺の甲状腺細胞培養を行った. この培養系ではTSHにより培養中へのT_3, Tgの分泌促進, およびCーAMPの産生の増加がみられる. 甲状腺細胞をインターフェロンrで4日間培養し, 細胞表面に明らかなDR抗原の発現がみられた. ついでインターフェロンrを除去後, TSH, あるいは, DBCーAMPを加えると, インターフェロンrの前処理のないものに比較して明らかに, T_3, Tgの分泌が抑制され, これはインターフェロンrに濃度依存性であった. インターフェロンrとTSH, あるいはDBCーAMPを同時に加えると同様にT_3, Tg分泌はインターフェロンr濃度依存性に抑制された. 一方, TSHによるCーAMP産生はインターフェロンrの前処理の場合には抑制されたが, 同時添加では抑制されなかった. インターフェロンrはこのようにDR抗原を発現さすか, 細胞そのものはむしろホルモン分泌を抑制することが認められた. その作用部位はCーAMP合成前, 後いずれにもあることが推察された. バセドウ病ではDR抗原陽性甲状腺細胞は橋本病甲状腺に比較して少なく, この細胞はTSHレセプター抗原提示細胞の役割を果しているが, 機能そのものは低下している とが予想された.
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