研究概要 |
1.造血幹細胞に対する調節機構と幹細胞異常症における検討 正常ヒト骨髄のCFU-gmはプロスタグランディン【E_2】(PG【E_2】)によって濃度依存性に抑圧される。一方CFU-eはアンドロジェンによって増強する。前者はフィードバック機構による増殖抑制、後者はCFU-eに対する直接刺激作用である。幹細胞異常症たる骨髄異形成症候群の骨髄CFU-eは、アンドロジェンの添加効果に不応性であり、CFU-gmも進展した病期にはPG【E_2】による抑制効果が認められなかった。骨髄増殖性疾患群でも慢性骨髄性白血病は、本態性血小板血症や真性多血症と異なりPG【E_2】抑制反応を欠いていた。PG【E_2】の正常骨髄CFU-gm抑制反応は、CSF濃度によって修飾される可能性が示唆され、一方、抗アンドロジェンや標記アンドロジェンを用いた実験によって、正常ヒト骨髄細胞にアンドロジェンレセプターの存在することが確認された。 2.いわゆる分化誘導物質の造血幹細胞に及ぼす影響 活性型ビタミン【D_3】(【D_3】)やインターフェロンγ(IFN-γ)は、骨髄異形成症候群の芽球を単球系に分化させる。液体培養系でみられたかかる効果を幹細胞培養系で検討するに、一部の症例ではIFN-γによってCFU-gm生育の改善が得られた。正常ヒト骨髄CFU-gm,BFU-e,CFU-eとも、IFN-γによって濃度依存性に抑制された。【D_3】投与マウスでは、多能性幹細胞からCFU-gmへの方向づけが促進される可能性が示唆され、その機序を検討中である。 3.株化白血病細胞を用いた血球分化異常の検討 慢性骨髄性白血病由来の3株(KYO-1,KPB-【M_8】,KPB-【M_(16)】は、組換え型CSF単独あるいは他の分化誘導物質と併用によっても、分化傾向は認められなかった。
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