芽球性急性転化した慢性骨髄性白血病細胞の自律的増殖能、分化形質の発現異常がなにによるのかを明らかにするため、腫瘍細胞のオートクライン・システムを想定して、白血病細胞の自己増殖因子とそれらのレセプターの解析をおこなった。培養中の白血病細胞に放射性アミノ酸をとりこませることにより、アイソトープで標識された白血病細胞由来の自己増殖因子を合成した。この増殖因子をふくむ培養液中で白血病細胞を培養し、増殖因子ならびにこれと結合する細胞膜レセプターの両者を交又結合法により化学的に共有結合した後、細胞膜タンパク質を界面活性剤をもちいて可溶化し、2次元ポリアクリルアミド電気泳動法で展開した。そして、これらのタンパク質をオートラジオグラフィー法で同定することを試みた。現在、抽出した膜タンパク質に対する単クローン抗体を作成し、メッセンジャーRNAの分離、それらにそう補的なcDNAライブラリーの作成、さらに遺伝子レベルでの解析をめざして研究を進めている。 また、すでにクローン化されているRASがん遺伝子について、in vitro塩基増幅法を応用し、白血病細胞の急性転化に係わるRASがん遺伝子群の変異を解析した。急性転化した慢性骨髄性白血病患者より分離・樹立されたヒト・【Ph^1】陽性細胞株(K562)から、高分子染色体DNAを分離し、培養中の標的細胞(NIH3T3)に導入した。フォーカス形成法によって形質転換細胞とおもわれる細胞株を分離し、現在、得られた転換細胞から活性化されたヒト・発がん遺伝子を同定するとともに、DNA塩基配列の変化を決定する作業を進めている。
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