研究課題/領域番号 |
61480260
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
高月 清 熊本大学, 医学部, 教授 (80026830)
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研究分担者 |
麻生 範雄 熊本大学, 医学部, 助手 (50175171)
服部 俊夫 熊本大学, 医学部, 講師 (30172935)
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キーワード | 白血病 / リンパ腫 / T細胞受容体遺伝子 / 成人T細胞白血病 / T細胞受容体 -CD3複合体 / HTLV-1 / 発癌機構 |
研究概要 |
本年度はまず、最後に単離されたT細胞受容体(TCR)δ鎖遺伝子の再構成の有無を造血器腫瘍症例において検討した。その結果、T細胞腫瘍では2例を除き、TCRβ、γ、δ鎖ともに再構成し、δ鎖は欠失していた。δ鎖はTCRα鎖の可変部と結合部の間に位置し、α鎖の再構成に際し欠失するのでT細胞腫瘍はほとんどα鎖再構成をまたしていると考えられる。未熱T細胞の2例はTCRβ、γ鎖の再構成は認めず、δ鎖のみ再構成していた。δ鎖がβ、γ鎖に先行して再構成することが示唆され、未熱T細胞の単クローン性の決定にδ鎖が有用であることが明らかになった。未熱β細胞白血病ではδ鎖とγ鎖は半数以上がともに再構成していた。両者に共通の再構成の機構が存在することが示唆された。また成熟B細胞腫瘍ではTCR再構成例は少数であった。TCRが再構成した未熱B細胞はそれ以上分化し得ないと考えられた。このように未熱B細胞でも、TCRは高率に再構成しており、その機序を解析する上で、またこのような細胞と白血化との関係も興味深く思われた。一方、成人T細胞白血病(ATL)の細胞表面のTCR-CD3複合体の発現値下はすでに報告したが、ATL症例から樹立した6つの細胞株について今回は検討した。TCR-CD3複合体の発現が高かった3つの細胞株ではTCRβ鎖の再構成パターンも、ATLの原因ウイルスであるHTLV-Lの組み込み型も新鮮細胞と異なった。他方、TCR-CD3複合体の発現低下を認める3つの細胞株ではTCRβ鎖の再構成もHTLV-1の組み込み型も新鮮細胞と同一で、同じクローン由来と判明した。したがってATLの発症にTCR-CD3複合体の発現値下が強く関与している可能性が細胞株においても示唆された。今後はATL細胞のTCR-CD3複合体が認識している抗原について検索し、その発症機序を解析する。また細胞増殖ひいては発癌に関与している増殖因子についても解析する。
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