研究概要 |
染色体分析法についてはlthidium bromideを用いる高精度分染法を確立し、MDSをはじめとする多くの造血器腫瘍の分析に大きく寄与しうることを報告した(Cancer Genet Cytogenet)。そして多数のMDS症例の分析から約2/3症例が染色体異常を伴い、予後と密接な関係を示すことを報告した(日血会誌49:1377-1387,1986)。また、造血幹細胞コロニーの染色体分析法を確立し、医学のあゆみ(139:117-118,1986)に報告した。この方法を用いて、CML症例で骨髄直接法よりも早期に急性転化クローンを捉えることに成功した(日血会誌49:1388-1395,1986)。19例のMDS症例の検討から、造血幹細胞コロニーの形成能が悪いこと、顆粒球系でのコロニーノクラスター比が小さくなること、そして、FAB亜分類に拘らず症例間の格差が大きいことを報告した(第48回日本血液学会総会、福島)。そして、単-コロニーでの染色体分析を施行し得た症例では、顆粒球系幹細胞には正常核型を有するクローンと異常核型を有するクローンが混在し、何れもHPCMに反応し、コロニーを形成し得ることを報告した(第28回日本臨床血液学会総会、秋田、第45回日本癌学会総会、第4回白血病治療国際シンポジウム,ローマ,白血会誌,印刷中)。これは、MDSの病態解明にはコロニー数の単純な比較だけでなく、その由来クローンの検討が必須であるとする我々の一連の研究方針を支持するものであった。一方、フリーラジカル反応が、種々の病態に影響を及ぼしていることは近年注目されているところであり、我々も赤血球の加会に伴いGSH-peraxidase及びGSH-reductase活性が低下することを報告した(clin chim Acta 159:73-761986)。MDS症例では赤血球内のGSH-peroxidase活性の元進、過酸化脂質の高値等を認めたことから、酸素中毒性感受性元進の存在が推測され、MDSに対するこの方面からの検討の重要性を指摘した(第10回過酸化脂質学会、東京)。
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