研究概要 |
本研究の目的は, 血管平滑筋細胞と精製コラーゲンとを混和させることによって管状構造物を作成し, 小口径代用血管としての可能性を追求するものである. 昨年度の研究によって, 実験動物(イヌ)の動脈もしくは静脈から無菌的に酵素法を用いて, 血管内皮細胞および血管平滑筋細胞を採取, 培養する技術は確立し得た. これらの血管壁構成細胞は, 本年度もひきつづき, 人工血管との組み合わせによって, ハイブリッド人工血管への応用の可能性を探る基礎的実験に用いることができた. 今年度の研究計画では, ガラス管内における精製コラーゲンと血管平滑筋細胞の混和によるコラーゲン管の作成を恒常的なものとして, 動物血管への移植実験をすすめる予定であった. しかし, コラーゲン管作成のためには, 大量の血管平滑筋細胞数が必要であるため, 初代培養からの増殖に2〜3ヶ月を要する結果となった. また, コラーゲンとの混和による管状構造物としては, 未だ満足すべき形態が得られるまでに至っていない. 米国におけるこの方面の研究に従事してきた進藤俊哉によれば, この原因の一つとして, 培養液組成など基本的問題が考えられている. 今年度の研究実績としては, 以上のように, 当初の計画からの後退があるものの, 血管平滑筋細胞の培養維持が可能であること, コラーゲンを被覆した人工素材への植え付けが実験的に確められたこと, 同時に採取される血管内皮細胞を用いてのハイブリッド人工血管の可能性が示唆されたことなど, 今後の小口径代用血管開発の研究に寄与する成果が得られた. 来年度は, 本研究の最終年度として基礎的検討の見直しと, コラーゲン管の作成をつづけ, 動物への移植実験をおこなって研究のまとめとする.
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