研究分担者 |
木下 順弘 大阪大学, 医学部・特殊救急部, 助手 (30195341)
上西 正明 大阪大学, 医学部・特殊救急部, 助手 (90176610)
杉本 寿 大阪大学, 医学部・特殊救急部, 講師 (90127241)
吉岡 敏治 大阪大学, 医学部・特殊救急部, 助教授 (60127313)
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研究概要 |
本研究は抗利尿ホルモンとカテコールアミンを同時投与する方法により、従来より遙かに長期間にわたり安定した状態で管理し得るようになった脳死症例において、脳死後の主要臓器機能の検討を目的とした。特に心臓、肝臓、腎臓、脳下垂体を中心として病理組織学的検討をも行い、臨床的検討と対比し、以下の結論が得られた。〈結果と考察〉1、心機能は抗利尿ホルモンとカテコールアミンの投与により長期間維持されたが、脳死直後には一過性の心電図変化や心機能低下がみられ、その後回復し、血圧維持に必要なカテコールアミンが経過中減量できた。光顕的には心筋繊維の萎縮や肥大、細胞間浮腫がみられ、電顕上は経日的なミトコンドリアの障害と筋小胞体の拡張、筋原繊維の収縮などの所見が特徴的にみられた。その原因としては除神経による心筋の代謝障害や初期にみられる循環動態不安定の影響が考えられた。2、肝臓ではしばしば黄疸と胆道系酵素の逸脱がみられ、組織学的にも脳死後時間が経過するに従い高率に細胆管炎像が認められた。黄疸は脳死後何からの原因で起こる細胆管炎によるものと考えられた。3、腎機能は抗利尿ホルモンとカテコールアミンの投与により良好に維持されることが明らかとなった。形態学的にも細尿管上皮の脱落以外には特異的な変化はなかった。4、脳死後の脳下垂体前葉ホルモンの血中レベルは、ACTH,HGH,LH,FSH,TSH,プロラクチンの何れもが数日間にわたり検出されたこと、TRHの投与試験に反応し、血中TSH及びプロラクチンの分泌が証明されたことより、従来脳死後には廃絶するのではないかと考えられてきた脳下垂体機能は部分的に残存していることが明らかとなった。組織学的にも脳下垂体前葉の腺細胞残存が証明された。このことは脳下垂体が脳ヘルニアの直接的圧迫を受け難いという解剖学的特徴に加え、その支配血管が必ずしも内頸動脈の硬膜内走行枝のみではないことによるものと考えられた。
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