研究概要 |
正常マウスに部分肝切除(HEP)を加えると脾細胞のADCC活性、NK活性の増強がみられ、またin vitroでのLAK活性誘導も増強される。またHEP後に同系のMH134肝癌を接種するといったん生着、増殖するが、1週頃より退縮、2週頃には拒絶され、特異的免疫が成立する。HEP後の非特異的キラーの活性化と肝癌に対する特異的免疫の誘導の現象の間に如何なる因果関係があるのか不明である。そこでこの二つの現象の関連を解析する目的で、HEP後の脾細胞をin vitroで種々の腫瘍細胞、あるいは再生肝細胞と混合培養し、誘導されるキラー細胞の活性を検討した。 HEP後7日目の【C_3】Hマウス脾細胞をresponderとし、各種腫瘍細胞をstimulaterとする5日間のMLTRを行った。同系肝癌細胞であるMH134、MH129を、stimulatorとして用いた場合には、いずれの肝癌細胞に対しても障害性を有する、しかし他の腫瘍細胞には障害性を示さない特異的なキラー細胞が誘導された。また同系のX5563をstimulatorとして用いるとX5563に特異的なキラー細胞が誘導された。しかし単に開腹しただけの対照群の脾細胞からはMH134に対するキラー活性は誘導されなかった。次にHEP後7日目の脾細胞を肝切除2日目の同系再生肝細胞あるいは受精後10日頃の同系胎児肝細胞で刺激するMLLRを行うと、MH134,X5563などの同系腫瘍,JTC,MethAの同種腫瘍,Walker256,K562の異種腫瘍のすべての腫瘍細胞に対し細胞障害活性を示し、さらに同系再生肝細胞,胎児肝細胞などの正常細胞に対しても活性がみとめられた。 MLLR,MLTRによって誘導されるエフェクター細胞の活性は抗Thy1,抗Lyt2抗体と補体によってほぼ完全に消失し、抗Lyt1,抗ASGM1抗体と補体によって半減したことより、Thy【1^+】,Lyt【2^+】,一部Lyt【1^+】,ASGM【1^+】の細胞群から成立っているものと推定された。
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