研究概要 |
近交系ラットBuffaloをドナー、Wister-furthをレシピエントとする同種移植腎の生着期間は、9.2±0.8日(n=6)であったが、これにシクロスポリン(CsA)10mg/kg/日を3日間投与すると、11.8±1.8日(n=17)に延長した。さらに、CsA投与に加えて、移殖前1日目にドナーの3M-Kcl抽出抗原を併用投与すると、19.3±8.8日(n=18)に延長した。つぎに、ドナー抗原としてドナー全血5.0mlを前投与した場合の生着期間は、輸血のみでは7.5±0.8日(n=8)と対照と比べ有意差はなかったが、これにCsA10mg/kg/日を併用投与すると、45.9±20.2日(n=10)と著明に延長した。 CsA併用投与下での至適輸血量をみるために、ドナー全血を0.5ml,1.0ml,2.0ml,5.0ml前投与する各群について生着期間をみると、0.5mlでは14.4±4.5日(n=7)、1.0mlでは28.6±15.6日(n=7)、2.0mlでは34.1±18.6日(n=9)、5.0mlでは45.9±20.2日(n=9)と、輸血量が増えるにしたがって生着期間は有意に延長した。 これら併用投与による長期生着のラットのリンパ球は、ドナーリンパ球とのmixed lymphocyte culture reaction(MLCR)で低反応性を示し、第3者間でのMLCRも抑制した。 このように、CsA単独短期投与で若干延長し、ドナー抗原単独投与では延長しなかった生着期間が、両者の併用により著明に延長したことは、両者のsynergicな効果によってactive enhancementが達成されたことを示唆している。これら長期生着ラットのリンパ球がMLCRを抑制したことは、生着延長効果の発現にサプレッサー細胞が関与していることを示唆している。この抗原前投与の効果はdose dependentであったが、その至適投与量の決定は、今後に残された課題である。
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