研究概要 |
1.甲状腺癌既治療例についての臨床的ならびに病理学的検討 本研究の大きい目標が甲状腺癌の診断と治療成績の向上にあり、今までの甲状腺癌既治療例を昭和56年4月までさかのぼって臨床所見,治療内容,治療後の追跡状況について検討を加えた。とくに問題があるのが、局所で隣接組織に浸潤する低分化乳頭癌および血行性転移を起す濾胞癌である。 低分化乳頭癌の局所における隣接組織への浸潤に対しては、積極的な手術摘除が症状寛解の目的で十分の効果があり評価できるが、血行性転移を生じたものに対してはモノクローナル抗体による治療の余地が十分にある。 濾胞癌に対しては従来通りまだ適確な診断法がなく、血行性転移に対しても131I大量投与療法が奏効しない症例が多くモノクローナル抗体療法に期待されるところが大きい。 2.甲状腺癌特異抗原に対するモノクローナル抗体の作成 モノクローナル抗体作成担当者が諸般の事情により申請時と変ったため、新らたに組織培養装置をはじめ抗体作成用の諸設備をととのえた。 (1)抗体作成の抗原に供すべく、甲状腺癌細胞2株の培養に成功した。 (2)培養した甲状腺癌細胞をヌードマウスに移植し、それがよく生着し継代移植を行っている。 (3)モノクローナル抗体作成に着手し、現在細胞融合の過程を経て、モノクローナル抗体産生細胞を検索中である。 3.甲状腺癌手術にさいし、癌摘除組織を多くの症例からとり保存している。 4.次年度研究の展望 近くできる抗体を、先ずin vitroで甲状腺癌組織、サイログロブリン、患者血清などにつき特異性を検討し、あわせてヌードマウスに移植した甲状腺癌組織についても検討を行なう。
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