研究概要 |
本研究は肝癌の増殖, 分化に対する肝再生因子の作用を明らかにし,新治療法確立の可能性を検討せんとするものである. 3年間にわたる研究計画のうち,2年目にあたる昭和62年度では,In Vivoにおける実験をラットおよびヌードマウスを用いて推進した. 1.ラット肝部分切除の肝癌増殖に及ぼす影響:肝細胞癌KD1+-8(1×10^6)をWKA/Hラットの皮下に移殖し, 70%肝切除を行った群と無処置群との間で腫瘍増殖のMitotic Indexー(MI),Stimulation Index(SI),NK活性などを比較した. 肝切除群では腫瘍増殖は明らかに速く,1日目で特に著明であった. MIは36〜48時間で有量に上昇し,NK活性は肝切除群で2〜7日において有意に土昇した. SIは一応の傾向はみられなかった. 以上から,肝再生因子が肝のみならず肝癌細胞に対しても増殖促進の方向で作用していることが明らかで,この場合肝癌増殖と免疫能の動言とは相関性が少ないものと考えられた. 2.ヌードマウス移殖肝癌に及ぼすヒト上皮増殖因子の影響:ヌードマウスに樹立された肝細胞癌HCー4を用いて,無処置群,ヒト上皮増殖因子(hEGF)投与群,Interferon γ (INFγ) 投与群,hEGF,INFγ両者投与群の4群を作成し, 14日間にわたってそれぞれを投与した. 1日おきに腫瘍径を測定し,増殖曲線を作成した. 無処置群に比してhEGF投与群ではやや増加傾向,INFr投与群ではやや少傾向がみられたが,明らかな差はみられなかった. hEGF,INFγ両者投与群では明らかに腫瘍増殖が抑制された. したがって,hEGF単独では腫瘍に増殖的に作用するが,INFγと併用投与すると抑制的に作用することが明らかとなった.
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