研究概要 |
1.ハムスター実験膵癌培養細胞株の樹立 ハムスター実験膵癌の皮下継代腫瘍から培養細胞株HPK-1を樹立した。血行性転移の着床過程で血小板が関与するとされているため、HPK-1の血小板凝集能を検討したところ、ヒト血小板,ハムスター血小板,両者の凝集能を有していた。酵素処理ではノイラミニダーゼ,ホスホリパーゼ【A_2】の処理にて、ヒト血小板の凝集が抑制され、シアル酸と脂質を含む細胞表面活性物質が凝集に関与していると思われた。 2.ハムスター実験膵癌肝転移モデルの作製 HPK-1細胞の皮下継代移植腫瘍から、コラゲナーゼ1mg/mlを含む酵素液で処理し単細胞としたものを用いた。6週齢雄性ハムスターをエーテル麻酔下に開腹,門脈本幹から単細胞浮遊液を0.5ml注入し、2週後の肝表面転移結節数を算定した。癌細胞1×【10^5】個注入にて肝表面転移結節数は平均6.2個,5×【10^5】個注入にて平均25.6個,1×【10^6】個注入にて平均63個と、転移結節数は注入細胞に対して直線的な関係が得られた。 3.抗血小板作用を示すプロスタグランジン【I_2】,【E_1】によるハムスター実験膵癌肝転移抑制実験 以下の実験では注入細胞数を1×【10^6】個にした。プロスタグランジン【E_1】100μg,0.2mlを癌細胞注入5分前に門脈内投与した群では、肝表面結節数は平均41.6個と減少し、【I_1】100μg群では平均10.2個と6分の1に減少した。また全ての群において、肺・腎・脾など他臓器に転移が助長されることはなかった。以上により、膵癌切除術において、術中門脈内プロスタグランジンE1を投与することにより術後早期の肝転移予防が期待される。
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