研究概要 |
肝臓移植における手術手技や術中後管理はその成否を左右する極めて重要な役割を担っており, 初年度(61年)はドナー, レシピエントの両者が共に生存するための移植片採取の工夫を行い, 62年度はその研究を更に継続し, 最終年度(63年)に行う部分肝移植のコントロールとして送血ポンプを用いた同所性全肝移植を行い, 手術手技や術中術後管理法などを検討した. 1.ドナーの肝広範切除・肝動脈同時遮断の病態とCoenzyme Q_<10>(CoQ_<10>)投与の効果:部分肝移植の肝動脈吻合には肝移植片の動脈として総肝動脈を用いるため, 肝移植片採取時に残存肝に流入する肝動脈を同時に遮断して肝移植片に総肝動脈をつけて摘出し検討した. ペニシリン投与下でかつCoQ_<10>を投与すると70%肝切除・肝動脈同時遮断の4週以上生存率は80%以上を示し, CoQ_<10>非投与の43%より有意に高く, 肝障害は軽度で良好な肝再生を示した. 残存肝組織中や血漿中過酸化脂質はCoQ_<10>で抑制され, 門脈単独支配である残存肝血流量は相対的に増加していた. CoQ_<10>投与により肝障害は軽減され長期生存が可能で, 部分肝移植ドナーのモデルとして利用できると考えられた. 2.同所性全肝移植:部分肝移植のコントロールとして, また移植手技やその管理を基本的に習得する目的で検討を行った. レシピエントの肝全摘後, 下大静脈や門脈のうっ血を解除すべく, 静脈静脈バイパスを作成し送血ポンプを用いてこれらの血液を頚静脈に送血した結果, 全例24時間以上の生存が得られ, また肝移植片のprecoolingや保存, 血行動態や凝固線溶系機能を中心とした術中術後管理も満足すべきものであった. すなわち, 移植後肝血流量は一度増加し数時間後に減少して, これがcritical level以下になると肝不全で死亡しており, 血流再開後のnon reflow現象が指摘されるとともに, 術中術後の輸液量は肝広範切徐の場合と異なりその5〜8倍の量が適正である等, 最終年度に必要な成績が得られた.
|