研究概要 |
2年間の188例の肝切除例のうち60例に、redox tolerance testを肝切除術前に施行し、術後の血中ケトン体比(アセト酢酸/3-ヒドロキシ酪酸;KBR)の推移と予後と比較を行った。75gr糖負荷試験(OGTT)を施行し、120分のKBR,血糖,Insulinの増加量をΔKBR,ΔBS,ΔIRIとし(ΔKBR/ΔBS)×IRIをredox tolerance index(RTI)とした。RTI1.0以上の症例は術後KBRが0.7以上を維持し予後良好であった。RTI0.5-1.0の症例は術後KBRは0.4-0.7を推移し管理に注意を要した。RTI0.5以下の症例は術後KBRは0.4以下を示し予後不良であった。以上の結果から術前RTIと術後KBRの推移とは有意に相関を示した。 肝切除術中、KBRを経時的に測定を行った所、従来おこなわれていた肝脱転など手術操作そのものでKBRが0.4を下回る事も判明した。 30例の肝切除例の肝cytochrome a量を今回購入した島津2波長分光光度計UV3000型用いて測定したが、従来発表してきた所見と一致した。更に、微量肝生検試料による迅速測定の研究を行った。理論的にはcytochrome a量とcytochrome a活性は相関するので、cytochrome aの測定を、針生検で得られる10mgの試料を低張リン酸緩衝液で処理しそのホモジェネートの還元型cytochrome cの酸化速度を本機を用いて測定する事が可能となり、現在臨床例に応用中である。 従来からの方法でKBRの値に準じたmetabolic intensive careを行ってきたが、術前にはredox tolerance testで肝予備能を的確に評価し、術中にはKBRを低下させない操作管理を行い、術後は従来のごとく基質の選択を主としたmetabolic intensive careを行うことにより、更に機能的にも、手術的にも拡大手術が可能となる事が期待出来る様になった。
|