研究分担者 |
清水 良一 山口大学, 医学部附属病院, 助手 (30187471)
内山 哲史 山口大学, 医学部, 助手 (90136177)
丹黒 章 山口大学, 医学部, 助手 (10197593)
岡 正朗 山口大学, 医学部, 講師 (70144946)
本間 喜一 山口大学, 医学部附属病院, 助手 (20144933)
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研究概要 |
噴門括約機構の最も重要な因子である下部食道括約筋(LES)は, 体液性, 神経性の調節をうけている. 食道アラカシアの病態生理を調べる目的で食道内圧検査を用いてVasoactive Intestinal Polypeptide(VIP), substance P(SP)のLESに対する作用を調べた. VIPはセクレチンに対し静止内圧で5倍, ガストリン刺激圧で7倍の強力な弛緩作用を示した(P<0.01). またDeloyerの方法により作製した食道アカラシアモデル犬は正常犬に対し2倍の過敏なVIPによるLES弛緩作用を示した(P<0.1). 対照成人を4名と食道アカラシア患者4名についてセクレチン投与によるLES変化を調べたところ, 両群ともにセクレチン投与によりLES弛緩作用を示し(P<0.01), 弛緩作用は食道アカラシア群で有意に強力であった((P<0.05). LES圧はSPの投与により量-効果関係をもって上昇した(P<0.01). また, SPの硬派VIPによるLES弛緩作用と拮抗した(P<0.05). PAP法を用いた免疫組織学的な検索により, 正常犬, 対照患者の下部食道括約筋層のAuerbach神経〓, 筋層内にVIPあるいはSPの局在を認めたが, 食道アカラシアモデル犬および食道アカラシア患者ではVIP, SP神経ともに減少していた. Radioimmunoassayによる定量でも同様の結論を得た. SPは刺激神経の神経伝達物質として, VIPは抑制神経の伝達物質としてLESの調節に作用しており, 特にVIP神経の減少は食道アカラシアのLES弛緩不全に関与していると考えられた. VIPは食道アカラシアの診断, あるいは治療に対し応用できる可能性があると考えられた. SPとVIPの作用機序に関しては違いがあると考えられ, 今後研究を進めたいと思う.
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