研究概要 |
臨床面において, 十二指腸潰瘍患者における24時間pHモニタリングを行い検討した結果, 従来より我々が主張していたように, 同一の十二指腸潰瘍患者でもpHの変動が大きく, さらに大きな個体差が認められた. また夜間におけるpHの変動は, むしろ高く維持されており, 従来より考えられていた『潰瘍は夜作られる』という概念と異なる知見を得た. さらに, 近年潰瘍治療薬の中心であるH_2^-受容体拮抗剤投与での酸分泌抑制をpHモニタリングで観察した結果, これら強力な薬剤に抵抗する潰瘍の存在が明らかとなり, 抵抗性潰瘍における消化管ホルモン(特にガストリン)の関与が示唆された. 動物実験では, 現在, 全胃癌を作成し, 外図性にアドレナリンを投与し, 酸分泌,ガストリン分泌を測定した結果, ガストリン分泌には, 80ng/Kg.hr投与で最大反応を得た. 今後, 各種迷切術を加え, ガストリン分泌の変動に関して検討したい. 最後に, 近年H_2^-容体拮抗剤の使用により, 外科手術症例の変動が生じており, 日本外科学園認定施設における全国アンケート調査を行い, 潰瘍に対する手術症例が減少したいるにもかかわらず, 緊急手術を必要とする出血, 穿孔例の総数に変化がなく, 相対的に頻度が増加し, そのため手術死亡率の上昇が確認され, 今後, 穿孔例における病態の解明と術式の選択が重要であろうと推察された.
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