研究課題/領域番号 |
61480288
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
青木 照明 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (20056708)
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研究分担者 |
秋元 博 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (20138704)
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キーワード | 十二指腸潰瘍 / 胃運動 / 胃分泌 / ガストリン / 胃切除術 / 選択的近位迷走神経切離術 / H_2受容体拮抗剤 / アドレナリンテスト |
研究概要 |
1.基礎的研究;(1)雑種成犬を用い、選択的近位迷走神経切離術(選近迷切術)を施行し、ひずみゲージによる胃運動を見た結果、幽門部の運動はコントロール群と差異はなく、正常に保たれていることがわかり、さらに幽門形成術を付加することで胃内容排出が促進することが判明した。(2)胃分泌面の検討では、幽門形成術を行うことで、選近迷切術後の高ガストリン血症が軽減できた。 2.臨床的研究;(1)過去16年間に、消化性潰瘍を施行した648例のアンケート調査を行った結果、胃切除術、迷走神経切離術とも比較良好な成績であったが、胃切除術後では迷走神経切離術に比し、食事摂取量の減少と体重の減少が有意に多く見られた。しかし、他の術後障害である、下痢、嘔気、腹痛ダンピング症候群、骨障害などに関しては差異を認めなかった。さらに、8年以上経過した選近迷切術後症例171例のうち17例(9.9%)に再発を認めた。(2)日本外科学会認定452施設に対するアンケート調査を行った結果、強力な抗潰瘍剤であるH_2-受容体拮抗剤が使用されるようになった1982年以降、消化性潰瘍に対する手術例はほぼ半数に激減しており、そのため相対的に緊急症例の頻度が増加していた。施行術式は、欧米の傾向とは著しく異なり迷走神経切離術が減少し胃切除術が増加していた。その原因としては、緊急症例の増加と迷走神経切離術後の再発が高いためと推察された。(3)アドレナリンテストによる、十二指腸潰瘍に対する手術術式の選択を行った結果、再発率は71例中1例(1.4%)と満足すべき結果を得た。 以上より、胃切除術に比し、迷走神経切離術は機能温存という観点からは優れており術後障害も少なく、アドレナリンテストを用い手術術式選択を行うことで、再発率を減らすことが可能であると考えられる。
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