1.消火性潰瘍の病態;潰瘍症例に対し24時間PHモニタリングを行った結果、胃内はPHは個体差が大きく、その日内変動にも大きな違いを認めた。また、インストリン、アドレナリンテストの結果、潰瘍発生に及ぼす迷走神経、幽門洞ガストリンの関与も動揺に個体差が大きかった。従って、画一的な治療法ではなく個々の症例における病体分析を行った上で適切な治療法を選択する必要がある。 2.本邦における手術治療の現況:(1)近年における、H_2-受容体拮抗剤などの使用による保存的治療の進歩により手術症例が約半数に激減している。しかし出血、窩孔など緊急手術を必要とする症例数に変化はなく、相対的に緊急手術率が上昇している。(2)手術術々は、欧米の傾向と異なり、わが国では迷走神経切離術の減少が見られる。これは、緊急手術率が上昇したため手慣れた手術を行うためと、迷走神経切離術後の再発が高いためと推察された。 3.胃手術後潰瘍再発と術後障害:(1)雑種成犬を用いた胃運動の検討から、各種迷走神経切離術の中で選択的近位迷走神経切離術(選近迷切術)は、胃内容排出が正常に保たれた。(2)ラットに協力な酸分泌抑制作用を持つH_2-受容体拮抗剤を投与すると投与後1〜3ケ月て高がストリン血症と幽門洞G細胞過形成を認め、選近迷切術後再発に体液性因子であるがストリンが関与する可能性が示唆された。(3)648例の潰瘍手術後症例にアンケート調査を行った結果、胃切除術後は迷切術後に比し、体重減少、食事摂取量減少を多く認めた。 4.手術術式選択:ガストリンによる酸分泌を促えるにはアドレナリンテストが有用であり、術前におけるアドレナリン刺激による酸・ガストリン反応より独自の選択基準を設けた。その結果十二指腸潰瘍に対する選近迷切術の再発は9.9%であったが、術式選択を行い1.4%と満足する結果を得た。今後も合併症潰瘍の術式につき検討が必要である。
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