研究概要 |
昭和61年度ではヤギを用いた実験的研究ならびに剖検心を用いたpulsatilepatch(PP)のfitting studyが行われた。PPは外壁、内壁ともポリウレタンのディッピング法により作成し、その血液接觸面はカルジオセンでコーティングした。(1)動物実験は拍動流ポンプ(人工心臓)またはローラーポンプを用いた右心バイパス法および気泡型人工肺を用いた完全体外循環法を用いて行った。動物実験の主目的は急性期における右心PP駆動,非駆動時の血行動態ならびに全身代謝への影響,および長期生存ヤギのPPの血液接觸面の組織学的検討に置いた。急性期においてはPPの駆動停止により、右房圧の上昇,右室・肺動脈圧の低下とともに大動脈流量の減小,大動脈圧の低下が認められたが、駆動の再開によって右房圧の低下,右心室,大動脈圧の上昇,大動脈流量の増加など血行動態の改善がみられPPの心補助効果が示された。急性実験ではPPの血液接觸面に肉眼的血栓附着は認められなかった。長期生存例は、術後の出血、呼吸不全などの合併症のため本年度では得られず、初期の目的である慢性期におけるPPの血液接觸面の組織学的検索,血液凝固因子の変化,全身主要臓器の機能,病理所見などの検討は行えなかった。(2)剖検心は最も持徴的な右心低形成を示すと考えられる三突弁閉鎖症のものを用いた。Fitting studyでPPによる右心室腔の拡大は可能と思われたものゝ、これら症例では右心室のみならず三突弁口の低形成を伴い充分な右心室機能を期待するためにはPPによる右室壁の拡大とともに代用弁による三突弁置換術の組み合せによる手術方法を必要とするであろうと思われた。
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