研究概要 |
広範な心筋梗塞に陥った心筋梗塞, あるいは右心低形成を伴った先天性心奇形に対する治療法として, ポンプ機能を備えたデバイスを使用して右室壁を置換する方法を開発している. 動物実験を通じてデバイスのサイズ, デザイン, 材質の選択を行ったが, その結果, 1回拍出量は12ml以上必要で, 三尖弁機能を障害しないよう幅4cm程度の楕円形パッチが適当であることが判明した. また材質についてはカルディオサンコーティングを施したものが, カルディオマットより優れた抗血栓性を有していた. 本デバイスをエネルギー源, 駆動装置をも含めて完全植込み式とする方向性とする方向性について, 現在開発が行なわれている完全植込み式左心補助心臓システムの現状をふまえて検討した. その結果, DCモーターに接続したインペラー型ポンプで, 右心デバイスとコンプライアイスチャンバー間に駆動流体(ミネラルオイル)の往復運動を行なわせる形が適当と結論された. コンプライアンスチャンバーに関する基礎的研究が行なわれ, 可動膜部分にベルアーを張り, 周囲組織との親和性を亢めることによってコンプライアンスを長期間に亘り保てることが判明した. デバイスを臨床使用した場合に起り得る血液凝固系への影響を予測するため, 同じ材質を使用している補助人工心臓の臨床使用症例における血液検査所見を検討した. その結果, 駆動中, 血小板は著減し, 線溶系物質も減少しており, 血液接触面における血小板粘着による消費と, それを溶解する線溶系の消費の結果と考えられた. 本法は装着の際には体外循環の使用を余儀なくされることから, 恒久的デバイス開発と平行して, より非侵襲的に装着の可能な, より短期間の駆動を目的としたデバイス, 例えば心室内バルーンパンピングなどの手法の開発も必要と思われた.
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