研究概要 |
宮城県における広範囲の地域における一般住民を対象として、精度の高い肺癌集検を行い、その成績を検討した。昭和57年度から60年度までの成績を分析した結果、延べ583,549名に間接胸部X線写真を撮影し、34,044名に喀痰細胞診を施行した。一次検診、精密検査ともに、徹底した姿勢で肺癌の見落しを最少とする努力により施行した結果、X線写真のみでは120例,喀痰細胞診のみでは69例,両者で18例,合計207例の肺癌を発見した。組織型別には、扁平上皮癌が117例,腺癌が68例,小細胞癌が7例,大細胞癌が12例,その他3例であった。X線のみで発見された120例中76例(63%)を切除し、19例(16%)が早期であった。喀痰細胞診のみで発見された69例中60例(87%)を切除し、48例(71%)が早期であった。 検診回数別の受診者10万対肺癌発見率は、初回実施時は42,2回目は37,3回目は25,4回目は30で、3・4回目の発見率は初回に比較して低く(P<0.05)同一地域で検診を続けることにより肺癌の発見数が減少することが知られた。喫煙指数別にみた喀痰細胞受診者数と、喀痰細胞診により発見された肺癌例数みると、喫煙指数1000以上の場合に高率に肺癌が発見された。 喀痰細胞診の経年受診により新規に発見されたincidence caseは、昭和60年までに25例あり、そのうち23例は、検診時の胸部X線写真上所見を認めなかった。このうち23例は扁平上皮癌で、2例は腺癌であった。これらの25例中24例を切除し、22例は術後病期Stage Ia,1例がIb,1例が【II】であった。また、このうち15例は早期扁平上皮癌であった。内視鏡的にも異常を認めないTX occult cancerの診断方法を確立させ、発癌過程に関する示唆を得ることができた。 今後は、受診者のコンピューター登録により、地域がん登録とも提携し、肺癌の発生率死亡率について検討する。
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