研究概要 |
癌患者並びにこれとの比較検討の対象とした非癌患者の血清,及び気管支洗滌液中における蛋白成分の組成の差異について,HPLC法及びSDSポリアクリルアミド法を用いて追究してきた. 既に報告したように,HPLC法によると,TSK gel G3000SWを用いた場合に,癌患者では非癌患者にくらべて,reteutcom time(RT)34分9分画が,有意に低値を示すことが判明した. また該当する分画の分子量が,1万前後にあることも確認できた. さらに,同様の実験條件下で,TSK2000を用いた分析結果では,同RT34分の分画が,癌患者の場合非癌患者に比して,有意に高値を示すことを明らかにした. すなわち,癌患者84例においては,0.77±0.95(%),非癌患者48例では0.15±0.16(%)であり,明らかに有意差(P〈0.01)はみとめることができた. また,UFー30を用いた限外濾過後の分析でも,その再現性を確認し得た. 一方,今回の肺癌患者の健側及び腫瘍側の気管支洗滌液の成分分析を1HPLCを用いて行った検索では,そのパータンが血清成分に類似していることが判明した. すなわちRT34分においては,健側洗滌液では2.28±2.85(%)であるのに比べて,腫瘍側洗滌液では,6.53±4.81(%)であり,有意(P<0.05)に腫瘍側において,高値のRT34分画が得られ,血清の析結果と一致し,これを今回の分析結果から確認しえた. なお,癌性脳水ないし腹れ成分のHPLCを用いた分析でも,脳水では0.7±0.47(%),腹水では1.22±0.84(%)と,RT34分画に含まれる大量の物質をみ出すことができた. すなわちRT34分画は,血清中のみならず,その他の体液中においても一般的に同様の動態を示す物質であることを,今回の分析研究で確認することができた. 現在この問題となる分画の抽出のため,Bicogelーpー30を用いてfraefion Collcctorで分集するなどの方法を試み,当該物質の同定,ならびに性質の解明に努めているところである.
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