研究概要 |
心臓リンパは冠循環の病態生理をよく反映することが知られている. 今年度は前年度までの成績をふまえ心臓リンパの動態によった心筋梗塞治療の手段を目的とした研究をおこなった. 実験は雑種成犬を用い, 対照群, ヒアルロニダーゼ(HY)投与群(HY群), 左冠動脈前下行枝根部結〓群(LAD群),LAD結〓後HY投与群(LAD+HY群)の4群に分けた. 心臓リンパ節輸入リンパ管からリンパ液を採取し経時的に流量を予定した. リンパ及び血清中の蛋白, 電解質濃度, 逸脱酵素, 〓透圧の変化を比較した. 前値を測定後HY群では5分後にHY500単位/Kgを静注し各々4時間測定した. 対照群では5時間測定した. LAD群では測定終療後左房より0.5%メチレンブルー20mlを注入し5分後に心臓を摘出し左室を0.5cm 間隔の切片とした. メチレンブルー染色による虚血領域とTTC:triphenyl tetrazolium chloride染色による梗塞領域を測定し各々左室重量に対する割合を算出した. 心電図, 動脈圧, 左室dp/dt心拍出量, 中心静脈圧を記録した. 経時的リンパ流量は対照群ではほぼ一定で 群では 投与後有意に増加した. Lad群では冠動脈閉塞後漸増し, リンパ流量の前値に対する増加率は180分以後ではLAD+HY群の方が高くなった. 虚血領域に対する梗塞領域の割合はLAD群で44.1+4.1%,LAD+HY群で9.4+4.9%とHY投与群で梗塞領域は有意に縮少した. 冠動脈閉塞後, リンパ中の逸脱酵素, カリウム濃度は漸増し, 動脈圧, 左室dp/dt, 15拍出量は有意に低下し, 中心静脈圧は有意に上昇した. 以上の結果よりHYによる心臓リンパドレナージの増加が心筋梗塞の範囲の縮少に影響を及ぼしていることが判明した. 心筋梗塞の進展に関与する因子, 特に冠動脈再灌流に伴う心筋障害と心臓リンパの積極的な輸送との関連が今後の検討課題である.
|