研究概要 |
心停止下開心術のみならず, 心臓移植においても再潅流障害を予防することは, それらの手術成績を向上させるために必要不可欠である. すなわち再潅流障害の結果として表われる浮腫の検討を行うことは重要なことであると考え, この浮腫の経時的変化の検討をNMRを用いて実験を行った. 実験は, 灌流液にシフト剤を加え, 更に血管の内外を区別するため, 血管を透過しない高分子のポリアミノ酸とシフト剤を結合させ摘出心の潅流を行った. まずシフト剤の検討では以下の結果を得た. 金属イオンとして0.1Mの場合, セリウム1.0PPM, ネオジウム2.2PPM, 2価鉄4.3PPMコバルト, 5.4PPM, ニッケル2.1PPM, 銅0.8PPMのシフトが得られた. この結果, コバルトのシフト効果の大きいことを利用しシフト剤として使用を検討した. またbroadning剤としてはその効果が期待できるものとして, マンガンが使用可能であった. 次に血管内外の水分を分けて測定する必要があり, ポリL-アスパラギン酸及びポリーL-グルタミン酸にシフト剤を結合させてNMRスペクトルを測定することを試みた. この結果40mMの濃度で血管内外のHスペクトルピークが分離できることが分かった. 現在のところ種々の心筋浮腫状態での検討を行っているところであり, 統計学的検討は近日中に発表できるものと考えている. また23Naについても同様の検討を行っており, これらの結果から当初の目的であった細胞内外の水分含量の経時的変化の検討が可能になると考えられ, 有益な実験結果が得られたものと考える.
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