研究概要 |
超音波が距離分解能以下の薄膜組織内入射されると反射波は干渉を受け膜の厚さなどに依存して変化することは薄膜反射理論として知られている. 厚さ既知の油膜で薄膜層を作成し5MHzの超音波probeにて反射率を捕えFFTケプストラム法を用い油膜の厚さを計測すると実際の厚さと極めてよい相関をなした. 雑種成犬の頭蓋を露出し平坦にして, delay材つき超音波probeを接着固定し頭蓋内板近傍から反射する干渉波形にgateをかけピークデテクターにより最大値を連続記録した. 実験にて超音波波形と硬膜外圧力計波形を同時比較し頭蓋内圧(ICP)を2種の方法(大槽生塩注入法, 硬膜外バルーン法)にて変化させても, 記録は類似した. 超音波波形はICPに類似するものの, 400mmH_2O附近で位相が逆転したりする変化を認めた. この干渉波が硬膜の厚みの変化に起因するのか硬膜下脳表までに至る部分を含むのかは確認できなかった. 薄膜構造の厚み歪み率はシステムを心電図のR波を基準として駆動させるFFTケプストラム波形分析ではICPと0〜600mmH_2Oの範囲で比例して変化し, ICP変化の情報源として重要であることがわかった. 臨床応用可能な頭皮上固定超音波probeを作成し同じシステムを用い情報の検出を行った. その結果頭蓋骨欠損部ではより明瞭に, 前頭側頭部ではややnoiseの多い信号が連続記録できICPの変化と対応して変化した. 脳室拡大症例では硬膜外圧力計と超音波波形との記録を同時に比較してその波形・変化の類似性を確認した. 頭皮上から検出する場合は血流によるDoppler信号の混入が重大なnoiseであることや頭蓋骨が8mm以上厚くなると内板まで超音波が到達しないことを確かめた. 反射波の受信が弱い場合は超音波信号発生器を附加した回路を用い, 波形の連続観察が可能であった. 信号処理をも含め一体化した超音波による頭蓋内圧情報処理装置を組み立てることができた.
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