研究概要 |
実験)ラット虚血モデルでは, Pulsinelliのモデるを若干変更したものを用い, 虚血30分間の負荷後, 血流を再開し, 脳血流量, 遊離脂肪酸, リン脂質分子種の測定を行なった. 血流再開後, 5分で局所脳血流量は虚血前の値を上回り, 126%から217%の増加を示した. その後は次第に減少し, 30分以後では虚血前値を下回りそれ以後も低下傾向を示した. 血流再開によっても遊離脂肪酸は30分間更に蓄積を続け, その後の30分(血流再開60分)で急に減少し, 虚血前値近くにまで戻り, その後は平衡状態を保った. 個々の脂肪酸は, 総量の変化とほぼ同様に増減に示したが, 20:4,22:6はいち早く減少し, 対照値とほぼ同じレベルに戻ったのに対し, その他の脂肪酸は60〜120分迄の間でも完全には対照値に戻らず, むしろ若干の増加傾向を示した. リン脂質分子種総量の変化については, Diccyl型のPCでは血流再開後も引き続いて分子種総量は減少を続け60分後に最も低い値を示した(P〈0.05)その後はやや増量を示したが, 統計的な有意差は認めなかった. 臨床)"モヤモヤ"病の脳循環, 代謝についてポジトロンCTを用いて解析しており, 今年度は成人発症9例について検討を加えた. 平均年齢43歳で局所脳血流は灰白質で若干の低下を認めたが, 白質, 大脳基低核は正常値を示した. 脳血流量は各部位で延長しており, 酸素消費量も若干の低下があった. したがって成人"モヤモヤ"病では酸素代謝の若干の低下と脳灌流圧の低下が強く疑われ, 循環予備力の低下が示唆された.
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