実験)虚血中にラット脳内の細胞骨格である微小管蛋白質(MAP)とニューロフィラメント(NF)の破壊がどのようにおこるかを検討した。ラットの断頸による完全虚血とPulsinelli変法により30分虚血、24時間再潅流モデルの両者を用いた。SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法と、イムリブロット解析を行った。NF200とNF150の分解が断頸により作成した虚血でもPulsinelliらの方法により作成した虚血でも、虚血後30分間以内におこり血流が回復しても回復しない不可逆的なものであることが示された。またNF200およびNF150の分解は虚血後10分間前後の潜伏期間をおいた後、始まり10分から15分の間に急速に進行すると考えられた。また20分虚血においてNF200とNF150の消失に伴ってそれぞれのバンドの直下にマイナーバンド(分子量195.000〜200.000、分子量145.000-150.000)の出現を認めた。NFの分解に伴ってマイナーバンドが出現することはNFの分解がプロテアーゼの作用によるものであることを示唆していると考えられる。さらにMAP1、MAP2の染色性は虚血15分まではあまり変化がないが、20分以降徐々に減少した。このことは脳虚血15分以降にMAP1、MAP2がプロテアーゼにより選択的に分解されたことを示すと考えられる。 以上MAP、NFの破壊がおこることは虚血15分以内にプロテアーゼの活性化がおこることを示しており神経細胞の不可逆的変化を従来よりも早い時期にとらえたことを示している。
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