研究概要 |
髄液腔内脳腫瘍細胞播種・転移のメカニズムとして, フイブロネクチン, 凝集因子, ピーナツアグリチニン, マクロファージケモタクテックファクター等の因子が複雑に関与している事を示し, これらの因子の相互関係について, より明確に証明し, 髄液内転移に関する模式を作製して報告した. さらにヒト脳腫瘍のアポ蛋白Eの分布を光学顕微鏡レベルで免疫組織学的に検討し, 俊来のグリオーマのマーカーであるGFAPより, より星細胞腫に特異的に陽性所見がみられ, 培養細胞を用いた検討では, 良性グリオーマに陽性で悪性グリオーマに陰性となり, アポ蛋白Eの発現はグリオーマの悪性度し逆相関する蛋白である事がわかった. 髄液腔内に転移した星細胞腫においては原発部との比較において, 転移巣における染色性は低下しており, ある程度組織学的にも生物学的にも悪化している事が示された,さらに電子顕微鏡レベルでの細胞内分布の検索ではGolgi装置とER(小胞体)に局在している事が判明した. スフェロイド培養を用いた研究では, 抗凝集因子抗体を作製して検討すると明らかに, スフェロイド形成に影響を及ぼす事が判明し, 臨床的には頭蓋内に広範に播種を示す腫瘍と孤立性に転移病巣を作製する腫瘍との間で細胞凝集活性の差がある事が判明した. 髄液内転移のメカニズムの解明のために, ラット腹水肝癌細胞(109A,136B)を大槽穿刺にて移植して癌性髄膜炎のモデルを作製した. 癌細胞凝集因子をつる109A細胞移植群は生存期間が長く, また転移病巣の範囲も限局する傾向があり, 神経組織の破壊も少なかったが, 一方, 癌細胞凝集因子をもたない136B細胞移植群では生存期間は短く病巣もより広範で浸潤性が強い事が判明した. 髄液腔内腫瘍細胞播種 転移の病態の成立には腫瘍細胞相互の凝集活性も一端を担っている事が明確となった.
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