研究概要 |
ウサギの大槽内にカオリンを注入して、水頭症モデルを作製し、夫々の水頭症の脳室拡大の時期的変化を、マイオジールを用いて描出させた。そしてGaltecトランスデュサーを用いて頭蓋内圧,及び上矢状洞圧を測定した。次いでその後脳室周辺及び脳底槽の病理学的検索を行った。その結果、初期はカオリンによる炎症が主因で頭蓋内圧が亢進するとともに、周辺の癒着により髄液(CSF)循環障害がおこる。その結果2〜3週目項より脳室拡大がおこる。病理学的にはsubependymal neural tissueの障害が、水頭症発生の時期により異なり、又これに一致して中枢神経障害の程度が変わる事が確認された。 この基礎実験をもとに、ヒト成人水頭症例の短絡術中に、われわれが開発した小型CSF流量計を短絡管に組み込み、19例の水頭症例のCSF循環動態と神経症状改善度を検索した。その結果安静臥仰位では、短絡管内のCSF下流量は0.01ml/min〜1.93ml/min迄種々変化する。又短絡管がmajor pathwayとならない例に神経症状の改善が良い、即ち一日換算量が約250ml以下の例に神経症状改善が良かった。この事はsubependymal neural tissueの障害程度と相関すると考えられた。 次に短絡管内のCSF流量に関与する因子を検索するため、体位を種々変換したり、胸・腹腔内圧の変化,高張溶液の急速投与,1日(24時間)における日内変動,一日水分摂取量との関係を頭蓋内圧,脳波,呼吸をはじめ種々のモニターをポリグラフで記録した。 その結果、成人水頭症の短絡管内CSF流量に変化を与える因子は、体位,胸・腹腔内圧及びREM睡眠期に随伴した頭蓋内圧上昇である事が判明した。一方高張溶液や補液量と短絡管内CSF流量には一定の相関は認めなかった。今後はCSFの循環改善と脳幹機能の変化を検索する方針である。
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