腰部椎間板ヘルニアに対する酵素化学的治療法の基礎的研究として種々の酵素を用いて、病理組織学的研究を行って来た。使用可能な酵素としては、多数あるが中でも安定した成績を示したものは、キモパパイン、コラゲナーゼ、コンドロイチナーゼABCの3種であることが、確認された。このいづれの酵素も経板を傷害することなく髄核を完全に消化することより、臨床応用可能な酵素と考えられた。いづれの酵素も注入后は、髄核細胞動態は同様な所見を示すことが明らかとなり、特に長期的には、老化のパターンをとり、高度の線維化を示すことが明らかとなった。特にサルを用いた実験群においては髄核の再生は3〜6ケ月にて完成し、以后は急速に老化、すなわちCollogenizationを生じる結果となっている。生化学的検討にてキモパパイン注入椎間板のプロラオグライカン量の経時的ウロン酸量により測定すると12週まではウロン酸はコントロールの50%以下に低下していた。線維輪も同様に50%近くまで低下を示し、コラゲナーゼでは、髄核成分の完全消化によりウロン酸測定は不能であった。線維輪はコントロールと同値を示しコラゲナーゼの影響はないものと考えられた。コンドロイチナーゼABCでは、キモパパインと同様に50%の低下を認め、その后経過とともに回復を認めた。線維輪への影響は少く、髄核の消化を目的として良い酵素と考えられた。 これらの実験結果よりキモパパインが最もすぐれたものであるが副作用の点より考えると、酵素効果はやや低いもののコンドロイチナーゼABCが髄核消化には、最もすぐれているものと考えられる。いづれの酵素においても現在臨床応用可能と考えられた。今后ともこれら酵素の他臓器に及ぼす影響につき検討を要するものと考えられた。
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