研究概要 |
腰部癒着性脊髄膜炎(LAA)15例,腰部脊柱管狭窄症(SCS)35例,椎間板障害(DL)39例およびミエロパチー(MP)30例,計119例の脊髄液におけるCathecholamin系代謝物質およびセロトニン系代謝物質を高速液体クロストグラフィーにより分析した. その結果,新たな知見を得た. 1.Cathecholamin系:チロシン(TYR)はLAAおよびSCSにおいて有意増量(P〈.05)を呈し, 同時にノルエピネフリン(NE)およびエピネフリン(E)も有意高値(P〈.05)を示す. 一方ジヒドロキシフェニル酢酸(DOPAC)およびその代謝産物であるホモバニリン酸(HVA)もまた有意水準でLAAに増量する. しかしこれら代謝過程での産物であるLーDOPA,DAおよびMHPGには変化が認められないことからチロシン代謝過程におれる次ぎの酵素の活性化が, LAAあるいはSCSに生じているとみられる. すなわた, フェニルアラニンヒドロキラーゼ(PH),ドーパシンβヒドロキシラーゼ(DBH),アルデヒドオキシダーゼ(AO),PNMTおよびCOMT等がこれである. これら諸酸素の活性化はLAAに必ずしも特異的とは言えないが, DBH,AO,COMTの酵素活性はLAA症例に特に顕著である. 2.セロトニン系:Lトリプトファン(TRY),セロトニン(5HT)および5ヒドロキイテンドールアセトアルデヒド(5ーHIAA)につき測定した結果,LAA症例において結果的に5ーHIAAの増加が認められ, セロトニンに対するモノアミンオキシダーゼの著しい活性化が示唆された. 以上の諸知見は馬尾部障害における局所代謝変化の存在を証明した新知見とみられ, かつ高位脊髄障害(MP)には殆んど認められないことから, 胸腰髄および馬尾における広義の絞扼性炎症過程に続発とた変化と推測される. そしてLAAにおいては症状の程度とNEおよびHVAが相関性がある可能性が示唆された.
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