研究概要 |
慢性関節リウマチ(RA)は重症から軽症まで種々の経過をとるが大関節の破壊が進み日常生活が困難となる重症病型と, 小関節の破壊に止まる軽症病型とが罹病早期より分かれ治療方針も変わってくることを我々は見出した. 高度な関節破壊に陥る重症病型において根本的に何が起きているかを引き続き研究した. 従来RAは関節の滑膜が主病変部とされていたが, 我々は破壊関節部の骨髄中にはヒトの癌に特異的な膜抗原と考えられているフコースの繰直し構造(F2)を細胞膜抗原とする特異な骨髄球が存在することを見出し骨髄が関節破壊に重要な役割を果たしている確証を得た. この骨髄での反応について研究を進めた. 正常では骨髄球のみられない骨幹端部骨髄という場に異常な骨髄球が集まる原因として, この部に骨髄球の増殖因子活性があることを見出した. 又この部に存在する多形核白血球(PMN;骨髄球が分化した細胞)は未梢血中には認められない組織破壊因子であるPMN因子の活性をもつことを見出した. (PMN因子はラットで発見されたがヒトには見出されていなかった. )この異常な骨髄球を感作療法によって減少させることを試みた. F2糖鎖をRA患者の皮内に注射した. 約50%のRA患者でリウマチ反応や赤沢値の改善を伴って関節炎症状が軽減し, 骨髄中の異常な膜抗原をもった骨髄球が著減した. 即ち骨髄という場, 異常な骨髄球がRAという病気で重要な役割をはたしている事を示すとともに, 重症RAの治療に一つの新しい手掛りを得た.
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