慢性関節リウマチ(RAと略す)の患者は高度の関節破壊に陥り日常生活が傷害され社会的にも重要な問題である。関節破壊の場として従来関節滑膜が重要視されてきたが、それだけでは説明のつかない現象も多い。我々は動物実験より関節炎発症に骨髄が重要な役割を果たすことを見いだし研究を進めてきた。我々は高度の関節破壊を示す重症のRA患者には罹病早期から軽症の例とは別個の自然経過を取ることを明らかにした上で重症病型特有の破壊機構があることを考え、RA病巣を調べてきた。その結果、重症病型のRA患者の罹患関節部の骨髄中に悪性腫瘍特有の細胞膜抗原を持つ大型の細胞が特異的に存在しそれが骨髄球であることを昭和62年度までに証明した。更に詳細に調べ、RA患者の腸骨の骨髄球には正常と異常と2つの細胞群があり罹患関節には異常な骨髄球が集積している事が分かった。この異常な骨髄球は健常人、変形性関節症や、化膿性関節炎の例では見られなかった。またRAの破壊関節部では特異的に高値の骨髄球増殖因子が見られた。骨髄球が分化した細胞である多形核白血球(PMN)についてこの部位を調べた。この部位のPMNは今まで人では見いだされていなかった強力な組織破壊活性因子であるPMN因子を特異的に産生していた。即ち、我々は昭和63年に重症RA患者の罹患関節部に特異的に存在する異常な骨髄球、骨髄球増殖因子、PMN因子を産生する多形核白血球という骨髄球系カスケードの存在の証明を完成させた。更に多発関節炎における骨髄の重要性を確認する為にコラーゲン関節炎ラットの骨髄を調べた。従来、炎症の重要な因子と考えられているインターロイキンは培養系では多くの研究がなされたが生体内の末梢血では見いだされていなかった。コラーゲン関節炎ラットでは関節炎の状態に平行して骨髄中に数種のインターロイキンの変動を証明し関節炎発症における骨髄の重要性を示した。
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