研究概要 |
1.X線学的研究 脊椎圧迫骨折,大腿骨頚部骨折を有する老令者の脊椎,大腿骨および手部の骨X線フィルムを5年以上10年間に亘り追跡し、経時的にその変化を分析した。まず、X線フィルムをサクラマイクロデンシトメータPDM-5で骨皮質と骨梁密度を計測した。さらに、その変化をソードコンピューターシテテルによりデジタル化し、老令者の骨変化とその特性をX線学的見地より、微細にかつ詳細に分析し解析した。その結果、老令者の骨組織は加令とともに加速度的に骨量の減少と骨皮質の海綿質化をきたし、脆弱化する。そのために外力に対して非常に抵抗力が低下し、骨折しやすいことが判った。多数の骨折を有する老令者にその傾向が著しい。このように5年以上に亘る老令者の骨変化の経過の解析研究は稀であり、さらに継続研究する。 2.生化学的研究 老令者の血清カルシウム,副甲状腺ホルモンおよび活性型ビタミンDを測定し分析ならびに比較検討した。その結果、高令者の骨代謝調節ホルモンの分泌状態は不均衡であり、そのため、骨折の発生に関与するのではないかと思われた。特に、X線学的に骨脆弱化のある者にその傾向が高いような印象を受けた。 3.実験的研究 ラットを用いて大腿骨骨折を実験的に作製した。そして、骨折部の組織を培養系に移し、その増殖状態を観察した。骨芽細胞系の培養系に移植すると、老令群では新生能に乏しく、骨芽細胞の増殖を抑制することが判った。さらに、培養を続け、老人骨折における骨新生能を究明し、老令者に欠除または不足する骨増殖因子を追究する予定である。
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