研究概要 |
本研究は"I shemia/reperfusion injury"の発生機序の解明と防止策の開発を目的とした. 研究実績は次の5項目にまとめられる. (1)動物を用いた心停止蘇後モデルででの脳機能と過酸化脂質との関係:ラットを対象として, 100%窒素を吸入させることによりhypoxic hypoxiaによる心停止をつくる, 7分後に輸液と心マッサージで蘇生をはかる. 自発呼吸が現れてからケージへ戻し, 日中と夜間の行動量を定量した. 蘇生後60分前後の脳内過酸化脂質量は増加しており, 行動のパターンが著しく障害された. カルシウムきっ抗薬である, ニカルジピン,ニモジピンを前処置しておくと,脳内過酸化脂質量の上昇が抑えられ, 行動量の分布がより正常化した. これはMcCordの仮説を支持する. (2)ショックモデルでの臓器過酸化脂質の動態:ラットを対象として出血性ショック,エンドトキシンショック,内臓虚血性ショックを作り, 血液と肝臓に含まれる過酸化脂質量(LPO)と産生系酵素(キサンチン酸化酵素:XO),消去系酵素(超酸素不均化酵素:SOD,カタラーゼ:CAT,グルタチオン酸化酵素:GPO)を定量した. 各モデルで肝臓のLPOは上昇し, XOの活性亢進とSODの活性低下が観察された. (3)臓器障害が起こるか:細胞を酸素遊離基産生の情況下に置いた場合の障害発生の有無を調べた. 麻酔したラットの気管内にクレプス液に溶解したXOとキサンチンを注入すると, 短時間でARDS様の変化を生じた. (4)細胞内での酸素遊離基産生の確認:虚血とした肝臓のミトコンドリアと細胞質を試料として, ルシフェリンを増強因子として化学発光を測定した. ミトコンドリア分画では明らかに化学発光が増した. (5)酸素遊離基産生の抑制がショックに与える効果:種々の操作のうちSODの投与が過酸化脂質の蓄積を抑え生存率を上げた. またヒト型SODの内臓虚血性ショックに対する効果がみとめられた.
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