研究概要 |
急性低酸素症など種々な病的状態で血液脳関門(BBB)が障害され、脳浮腫が形成される。高張マンニトール溶液の頸動脈内注入により一過性BBB障害を起こす実験モデルを作成し実験を行った。1.脳血管透過性亢進に対する各種薬剤の予防効果:麻酔下のラットに生食水,メチルプレドニソロン(MPS)30mg/kg,ウリナスタチン(US)5万u/kg,ビタミンE(VE)30mg/kg,コエンザイムQ(CoQ)20mg/kgのいずれかを静脈内投与した。1.5Mマンニトール2.5mlを総頸動脈内に注入し、直ちに2%エバンスブルー(EB)を静注し、20分後グルタールアルデヒドで灌流固定した後、脳を取出してEB着染の程度を観察した。MPS群とUS群では有意に着染の程度が低く、UE,CoQ両群では有意の変化を認めなかった。したがってMPSとUSはマンニトールによる脳血管透過性亢進を予防する効果があると示唆された。2.脳血管透過性亢進に対するMPSの至適薬用量について:1と同じ実験モデルで、MPS5mg/kg,30mg/kg,100mg/kg、をそれぞれ静脈内投与して、EBによる脳の着染程度を調べた。その結果30mg/kgが脳血管透過性亢進に対する予防効果が最も優れていると確認された。3.Neutralred(NR)による脳組織内PHの測定:PH指示薬NRはBBBを越えて脳組織内に取り込まれ脳細胞内PHを示す。ラットに4%NRを体重300g当り1ml静注後、液体窒素に浸清し、脳を取出した。凍結状態のまゝ海馬,視床が含まれる部位を冠状断、-30℃のCryostot内で脳実質を削り出し写真撮影した。これらのカラースライドの大脳皮質,海馬,視床部分を島津製二波長クロマトスキャナCS-930を用いて波長分析を行い、445,530mmの吸光度比により細胞内PHを求めた。大脳皮質7.05=0.09,海馬7.13±0.04,視床7.13±0.05の結果を得た。Siesj【b!¨】ら全脳PH7.04,小暮ら7.02〜7.15に近い値で、急性低酸素時の脳細胞内PH測定の基礎となるものとして断続実験中である。
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