研究概要 |
1.25頭の雑種成犬のうち, 5頭をコントロール群, 5頭をヒスタミン投与群(100μg/min), 15頭をセロトニン投与(100μg/min)群とし, 肺動脈幹と右心房にカニューラを挿入したのち, まず右心バイパス標本を作成した. つづいて, 左心房にカニューラを挿入して脱血を行い, 肺潅流標本とした. 左心房から導いた血液の貯留するリザーバーを上下することにより肺水腫発生効果を調べた. リザーバー内血液レベルの変化による肺水腫発生効果においては, 左心房圧から, 10, 15cmと上昇するにつれ各群ともリザーバーレベルの低下傾向を示したが, セロトニン群, ヒスタミン群では, それぞれ左心房圧上昇とともに有意のリザーバーレベルの減少を示した. また, 各群間での比較では, ヒスタミン群, セロトニン群で各左心房圧レベルで, コントロール群と比較し, 有意に大きなレベルの減少をおこし, 特にセロトニン群で著しかった. 2.セロトニン投与群をケタンセリンで前処置したものでメチセルジトで前処置したものに分け, それらの効果を調べた. メチセルジド群で肺水腫の発生はほぼ完全に抑制されたが, ケタンセリンではまったく抑制されず, Si受容体が肺水腫発生に関与していることが推測された. 3.大腿動脈から送血し, 右心房から脱血する体循環を上記の肺循環と併行して行い, 気管支動脈系を介する両循環の交通を調べた. 開始に伴い, 体循環系から肺循環系への急速な血液の移行がみられた. またそれは, 左心房圧に全く依存していた. 4.両側の星状神経節を切断して, 上記の両循環を行った. 星状神経節を切断すると, 体循環から肺循環への血液移行は急速に増加し, 気管支動脈の血流調節に交感神経系が関与し, しかも, 血流を抑制的に制御していることが示唆された.
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