研究概要 |
1)脊損神経因性膀胱のEUSについて:(イ)急性期脊髄性ショック期のEUSは外肛門括約筋(AS)が一様にactivityを消失させているのに比しEMG上activityの残存を認めた。(ロ)慢性期でのEUSはα-交感刺戟にて一様にactivityの亢進を認めた。ASのα-刺戟に対する反応は様々であった。(ハ)筋弛緩剤(pan curonium bromide)投与後のα-交感刺戟に対する反応から慢性期神経因性膀胱のEUSにおけるα-activationの機序は少なくとも陰部体性神経の神経終末を介するものでないと考えられた。(ニ)硬膜外電気刺戟によるEUSの誘発筋電図の検討からEUSのα-activationは壁内短交感ニューロンの神経筋そのものに起因すると考えられた。 2)脊損者におけるVURと腎委縮の関連性について:(イ)VURのgradeと腎委縮の有無および程度に関連性を認めた。(ロ)排尿時のEUSの動態は腎委縮と深い関係を示した。(ハ)radical TURPはEUSの協調不全を改善、VURをも改善、消失させる事が判明した。 3)ヒト外尿道括約筋及びその神経支配に関する超微的研究:(イ)ヒト前立腺外腺部に認めた自律性交感枝はさらに遠位EUS部へ伸びてEUSそのものといわゆるsurface junctionなる神経終末を形成、筋細胞までの距離が1.1Πmづあった事から機能的関与を示唆した。(ロ)ヒトEUSは3種類の横紋筋より成り、2種類の赤筋と1種類の白筋であった。 4)神経因性膀胱に対する根治的経尿道的前立腺切除術(radical TURP)について:radical TURPは脊損,非脊損を問わず男子神経因性膀胱の排尿障害治療法として90%以上の成功率の期待出来る根治的経尿道的前立腺切除術式である事が再確認された。ウロダイナミック的には術後EUSのDSD(detrusor sphincter dyssynergia)の消失・軽減,膀胱のcomplianceの増加,hyperreflexiaの消失・軽減が特徴的であった。
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