研究概要 |
精索静脈瘤患者の外科的加療時の睾丸生検により得られた睾丸組織をコラゲナーゼにより単細胞とし、アルコール固定後、RNase処理、ペプシン処理、さらにプロピディウム、イオダインによりDNAを蛍光染色(DNA瞬間自動測定装置により、そのDNA分布を測定し、同時に得られた睾丸組織の一部をH,E,染色にてジョンセン・スコア・カウント法に準じて定量的に評価したところ、不妊症を主訴とした精索静脈瘤症例においては、ジョンセン・スコア・カウントおよびハプロイド細胞の相対的比率も患側睾丸(左)において健側睾丸よりも低値であった。さらにジョンセン・スコア・カウント法では、精索静脈瘤の程度が大となるにつれて、左側睾丸の造精機能に低下を認め、ついには、両側睾丸に造精機能の障害を認める様になった。また、同時に施行した睾丸体積の測定においても、精索静脈瘤の程度が大となるに従って、まず患側の睾丸体積の減少を認め、さらには健側睾丸体積をも低下する傾向を認めた。したがって、今回検討した精索血管高位結紮術施行症例においては、両側睾丸の造精機能に何らかの低下を認めるが、その障害の程度は患側において健側よりも強いことが示された(1986年10月28日、第12回国際不妊学会にて発表。滝原博史、他)。 精索静脈瘤患者の外科的治療時に採取された精索静脈血中のプロスタグランディン(【E_2】,【E_(2α)】),の検討から、本症における造精機能障害の原因物質の1つとして、プロスタグランディンも考えられることが示された(第5回日本アンドロロジー学会教育講演にて発表。滝原博史、他)。 本症における患側、健側の睾丸血流測定の検討では、患側に血流の低下を認める傾向にあるが、なお、個体間での差も大きく、現在、動物において、本症患のモデル化の検討中である。
|