研究概要 |
腎細胞癌や表在性膀胱腫瘍の治療に免疫療法(前者はIFN-αまたはOK-432,後者はBCG膀胱内注入)を行い、治療前および治療経過中の担癌患者末梢血リンパ球のNK活性およびNK抵抗性腫瘍細胞に対する細胞障害活性(BRMキラー活性)を測定した。その結果延べ64人の腎細胞癌患者のうち、予後の悪いステージIII,IVのprogressive群でも高いNK活性を有しており、一方、BRMキラー活性は非常に活性が低下しており、NK活性は癌の進行度と一致せず、BRMキラー活性が良く一致することが示された。したがって、メラノーマやサルコーマでの諸家の報告と異なり、腎細胞癌患者ではNK抵抗性腫瘍に対するBRMキラー活性が患者免疫能の良いモニタリング法となり得ると考えられた。BCG膀注の場合、平均24.9ヵ月経過観察して22.2%に再発を見たのみであったが、その経過過程での免疫能の推移は現在検討中である。 一方、免疫療法の経過中に結局腫瘍の転移と増大によって癌死する症例では、BRM投与にも拘らずBRMによって末梢に誘導されていたBRMキラー活性が、例外なく低下していた。さらにこのような患者の末梢血リンパ球in vitroで同種ないし他種のBRMと培養してもBRMに反応しなくなる"BRM不応化"の現象が見出された。このBRMに不応化した担癌末期患者末梢血リンパ球は外与のヒト型レコンビナントIL-2によって活性化された。この現象は、IL-2以外のBRMに不応化した癌患者には他種BRMをさらに投与し続けるよりも、IL-2投与ないし、LAK細胞またはTキラー細胞とIL-2の併用投与を行う方が良いということを示していると考えられた。
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