研究概要 |
男子不妊症の原因はいまだに解明されているものは少ないが, その原因の1つに免疫の関与が挙げられている. そこで今年度も不妊患者における血中抗精子抗体の検索と精巣の組織免疫学的検索を行った.抗精子抗体の検索は精子凝集抗体, 精子不働化抗体を男子113例, 女子67例に施行した. 結果は男子では精子凝集抗体14例(12.4%), 精子不働化抗体6例(5.3%)が陽性であり, 女子ではそれぞれ8例(11.9%), 8例(11.9%)が陽性であった.精子濃度との関係は特にないがazoospermia例ではobstructive azoospermia 例にのみ精子凝集抗体, 精子不働化抗体陽性例が認められた. 次いで精巣生検を行った例についてPAP法でIgGの存在を検討した. パラフィン包埋による切片では抗原性を消失するためか沈着はみられなかったが凍結切片による検討では精細管壁にIgGの免疫複合体の沈着をみた. また人製子中にあるプロタミンが免疫に関与するのではないかと考え, 現在定性分離をすすめている. そして不妊症患者の精巣内ステロイド含有量の検討も高速液体クロマトグラフィーを用いて分析を行っている. また, 男子不妊症の原因の1つである精索静脈瘤の診断法として非侵襲的検査法である赤外線サーモグラフィーを用いて従来の測定法とは異なるヒストグラムモード, 冷負荷試験を用いて診断率は向上した.今後有力な測定法になるものと考えられた.
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