研究概要 |
1.妊娠ヒツジ(サフォーク種)を用い, 妊娠120〜130日の胎仔臍帯部にオクルーダーを装着し, chomic preparationを既報のごとく施行した. 最下値50〜60bpmの変動減速を誘起し以下の成績をえた. (1)10分周期の変動減速の発来により胎仔動脈血pHは120〜130分後に有意に低下し, 7.20未満となるものが約50%に観察された. (2)5分周期では30〜40分後に7.20未満となるものが約50%に同様に認められた. 2.さらに, ヒトにおいては臍帯因子による変動減速などを示す症例を対象に連続監視しその頻度・重症度を定量的に解析して胎児予後との関係を追求した. 1985年1月から1987年6月までの2年6カ月の期間中に当科で経膣分娩をした症例のうち, 分娩中に胎児心拍数陣痛図を記録し, さらに分娩直後に臍帯動脈血ガス分析が施行された妊娠37週以降2500g以上の児を出産した408症例を対象とした. 胎児心拍数陣痛図および出生時臍帯動脈血ガス分析の両方が調べられた408症例のうち, pH7.20未満の新生児仮死は48症例(11.8%),7.20≦pH〈7.25の新生児低pH群は65症例(15.9%)で計113症例(27.7%)が出生時臍帯動脈血pH値に異常を示した. 113例中97症例(85.8%)は分娩後期に胎児心拍数の異常を示した. 97例のうち変動性ー過性徐脈60症例(61.9%), 遅発性徐脈7症例(7.2%), 持続性除脈26症例(26.8%), 胎児心拍基線細変動消失4症例(4.1%)が観察され, 分娩後期に出現する胎児心拍数モニタリングの異常は新生児仮死発症を導く警戒すべき徴候であることが判明した. 変動性ー過性徐脈中等度群100例中23症例(23.0%)に新生児pH症が認められたが, 胎児心拍数正常群における低pH症発生頻度との間には有意差を認めなかった. しかし徐脈継続時間を60分以内と以上の2群にわけ新生児仮死発生頻度を比較すると, 60分以内の群では96例中4症例(4.2%)が新生児仮死であったのに対して, 61分以上の群では4例中2症例(50.0%)が新生児仮死で有意差が認められた(p<0.05).変動性ー過性徐液高度群は11症例である. このうち9症例(81.8%)に低pH症を認めた.
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