研究概要 |
交配日の明確な妊娠後期(妊娠120〜130日)のヒツジ(サフォーク種)を10頭用い、胎仔にchronic in utero catheterization(Fujimoto,S.et al,1982,1983)を施した。 術後3日目以降において基準心泊数より50〜100bpm下降するvariable decelerationをオクルーダー圧迫により誘起し、そのinterval設定を変化させ、以下の成績を得た。 胎仔動脈血pHが7.30まで下降する条件は、臍帯圧迫30秒間2分間隔で20〜30回、または60秒間2分間隔で5回であった。この状態は母体羊への酸素投与および経静脈的重曹投与により改善傾向がみとめられ、また、臍帯圧迫負荷を停止後30〜60分で回復傾向が確認された。さらに胎仔動脈血pHが7.25以下になるまで負荷を加えると、胎仔に非可逆性の変化がもたらされ、臍帯圧迫停止後24時間経過観察しても、pHおよびvariability減少の回復はみとめられなかった。この状態の実験動物に再度、同様の臍帯圧迫を負荷すると、急激にpHが0.7以下になり、胎仔死亡に至ることが確認された。 一方、ヒトにおいては変動性一過性徐脈を示した60症例のうち、高度群は11症例であり、このうち9症例が低pH症(pH<7.25)を呈し、新生児仮死に移行した。 以上により、胎児(胎仔)動脈血pH値7.25は胎児仮死の許容限界であることが示唆された。 これらの知見をもとに臍帯圧迫による変動性一過性徐脈高度群の胎児仮死許容限界範囲は極めて短時間(10分以内)であることが推察された。
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