研究概要 |
胎児中枢神経の発達過程を調べる目的で、人工子宮内胎仔哺育実験システムを用い胎仔行動出現様式の周期性を検討した。〈方法〉80〜136日齢の胎仔を帝王切開にて取り出し、人工羊水腔内で哺育した。換気は膜型人工肺で行、い血液ガス、電解質等を生理的状態に保ち、動脈圧,CVP,気管内圧,心電図,脳波等をモニターし胎仔の状態を判断した。24時間以上生存した15頭について、呼吸様運動(BM)を指標として行動の周期性を検討した。135日齢の胎仔では急速眼球運動(REM),口唇(MM),躯幹(TM),頭部(HM),及び四肢(EM)の動きを同時に観察・記録し、signal processorを用いてそれらの出現様式を解析した。〈成績〉(1)胎齢110日未満の胎仔ではBMは散発的に出現したが、110〜130日の胎仔ではBMのない時間帯が周期的に認められその持続時間は4.3±1.4〜11.3±3.5分(mean±SD)であった。(2)この周期性は循環不全及び脳のhypoxiaで消失した。(3)135日齢の胎仔には(a):REM密度(REM期における単位時間内REM出現度数)が高い時間帯(平均8.45/10秒),(b):それが低い時間帯(1.16/10秒)及び(C):REMの全くない時間帯が存在し、それぞれ、平均9.1,11.2及び9.2分の持続時間で周期的に出現した。(a)ではMMとBMの出現度数が(b)(c)より有意に高く、(b)でのEMのそれは(a)(b)より高い特徴が認められた(a)(b)(c)に於るMM,BM,EMの10秒当りの出現度数の平均:MM:5.01,0.04,0.02,BM:2.55,0.41,1.20,EM:0.13,0.32,0.10)。〈結論〉ヤギ胎仔では、胎齢110日以降に行動の周期性が出現する事、130日以降では、REM密度と各行動出現度数が異なる2種類のREM期及びnon-REM期の3期が周期的に出現する事を明らかにした。
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