子宮外胎仔保有法を用い、胎児仮死時におけるヤギ胎仔中枢神経系機能につき検討した。中枢神経系機能に関する指標としては頸動脈血流量と脳波を用い、脳波は周波数分析をすることにより各周波数成分ごとの量的変化を検討した。本研究に用いた子宮外胎仔保育システム及び生理機能モニター法については省略する。実験動物としては胎齢110〜135日のザーネン種山羊胎仔を用いた。胎仔の状態が安定したところで低酸素負担を加えた。負荷時間は6、4+2、0分、負荷前PaO_2は、30、9+4、6mmHg、負荷後PaO_2は14、4+4、6mmHgであった。 胎児心拍数は低酸素負荷開始後2分で低下傾向を示し、その後も進行性に低下し負荷解除直には0.58+0.02と最低値を示した。負荷解除後は速やかに上昇し6分で負荷物前値まで回復した。頚動脈血流量は負荷開始後4分までは0.98±0.05と著変を認めないがその後減少し、負荷開始後6分では0.74±0.06と最低値となった。解除後には急速に増加し1.15±0.04と前値を越えるようになるが、一過性であり再びやや低値を示した。一心拍あたりの頚動脈血流量を見ると、2〜4分にかけては直線的な増加傾向を示し負荷開始後4分では1.38±0.05となるのに対し、6分後では1.29±0.08とやや減少した。負荷解除後は再び増加し、2分後には1.51±0.04となった。その後は急速に減少し、負荷前値より低値を示した。脳波の記録上では振幅の軽度減少が認められるが、完全な平坦化は認められなかった。θ波に関しては低酸素負荷による変化は少なかった。α波領域では変化が出たものではα_1波・α_2波ともに負荷開始後約3分で低値を示した。低酸素負荷解除後は回復するがα_2波の方がα_1波に比し回復が遅れた。α_2波含有率の推移と頚動脈血流量の推移とを時相を合わせて検討すると両者間には密接な関連性があることが明らかとなった。
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