研究概要 |
癌末期患者の血漿中より赤血球に対する機能障害誘発物質(AIS)を分離し, それが与える赤血球への障害性並びに細胞性免疫能への抑制効果について検討を加えた. (1)AISは赤血球内ATP産生能に影響を与え, その結果, 赤血球変形能及び赤血球膜浸透圧抵抗を低下させることを明らかとした. さらに(2)AISは赤血球膜と強い親和性を持ち, 末期癌患者血清を健常人赤血球で反復吸着処理することにより, 本物質が除去されることを認めた. (3)処理後の血清には細胞性免疫能(T cellのmitogen反応性・MφのIL-1産性能)の抑制効果が消失することを認めた. 次に(4)家兎を免疫し抗AIS抗体を作製した. (5)本抗体を用いて間接蛍光抗体法により各種婦人科腫瘍患者の赤血球膜AISを検討したところ, 健常人, 良性腫瘍患者は全例陰性を示した. 一方, 悪性腫瘍患者では, 初期癌では陽性を認めないが, 癌進行に伴いその陽性率が高くなり, 再発例では全例陽性を示した. さらにAISは癌の組織型及び発生臓器に特異性は認めなかった. (6)抗AIS抗体を用いたアフィニティー・クロマトグラフィーを用いて癌組織よりAISの分離・精製に成功した. (8)進行癌患者の血清から特殊吸着型カラムを用いAISをほぼ選択的に吸着することにより, 赤血球脆弱化能, 細胞性免疫抑制能が消失することを認めた. この事実は末期癌悪疫質における病態改善を目的とする新しい血漿浄化療法の可能性を強く示唆するものである.
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