(1)スギ花粉症症候例を対象として花粉非飛散期に鼻粘膜抗原誘発を行い、鼻過敏症状および鼻粘膜ヒスタミン過敏性の変化を経時的に追跡した。同時に鼻洗浄液中の炎症性細胞、化学伝達物質を経時的に測定した。くしゃみ、鼻汁は抗原誘発後それぞれ10分および2時間で停止したが、鼻粘膜腫腸は30分と7時間の2相性にピークを示した。鼻洗浄液中好酸球数は即時型および遅発型反応の時期に有意な増加がみられ、後者において特に著明であった。好塩基球は遅発反応期に強い増加がみられた。ヒスタミンは即時型反応時に著明に増加するのに対して、SRS-Aは即時型および遅発型反応時に一致して2相性の有意に大きいピークを示した。鼻粘膜ヒスタミン過敏性の亢進は特に遅発型反応を示す症例において著明であった。 (2)卵白アルブミン受動感作モルモットを用いて鼻粘膜上で抗原誘発を行い、鼻粘膜内では生成されるSRS-A量と鼻粘膜に浸潤する好中球、好酸球数の経時的変化は測定した。抗原誘発後、鼻粘膜で生成されるLTC_4、LTD_4、LTE_4値はいずれも15〜60分以内に有意なピークを示し、60分以降に減少した。鼻粘膜組織内好中球は誘発後15〜30分、好酸球は1時間後より増加し始め、共に12時間後にピークに達して24時間後まで高値を維持した。 (3)通年性鼻アレルギー症例を対象として減滅作療法、抗アレルギー薬療法を行い、治療が鼻粘膜過敏性に与える影響を検討した。減滅作療法、DSCG、ketotifen投与による鼻粘膜過敏症状の改善と共に、ヒスタミンに対する鼻粘膜過敏性も有意に低下した。 以上より鼻粘膜過敏性は鼻粘膜におる抗原抗体反応の反覆によって亢進し、その背景には炎症性細胞浸潤の持続と、そこから遊離される化学伝達物質が関与するものと考えられる。
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