頭頸部癌患者12例の原発巣と頸部リンパ節転移巣癌細胞の間に抗原性の違いがあるかどうかを、癌キラー細胞に対する感受性によって検討した。キラー細胞は、自己癌とリンパ球を混合培養して、自己癌抗原に応答するリンパ球を更に組換え型インターリューキン2(rIL-2)で活性化して誘導した。このキラー細胞はOKT3+8+とOKT3+4+のphenotypeをもつ、少なくとも2つの群から成っていることが示唆された。又、そのキラー活性は、いわゆるLAK細胞活性とは異なることが照明された。1人の患者で原発巣および頸部リンパ節転移巣から共に癌細胞分離ができた症例は12例で内10例が扁平上皮癌、2例が腺癌であった。自己原発癌で刺激誘導されたキラー細胞(CLP)は12例中7例にみられ(58.3%)、自己頸部リンパ節転移癌で刺激誘導されたキラー細胞(CLm)は12例に4例のみであった(33%)。CLPもCLmも共に誘導に成功した3例について、CLPの原発癌および転移癌の障害活性、CLmの原発癌および転移癌の障害活性を検討し、又、交互にcold target inhibition testを行った結果、2つの示唆が得られた。 1.転移癌のキラー誘導のための免疫原あるいは刺激原のpotencyは原発癌のそれに比し低い。 2.原発巣癌細胞は組織学的に単一にみえても、キラー細胞誘導の免疫原性は単一ではなく、heterogeneityが存在することが示唆され、その中のある細胞群が転移を起す可能性が示唆された。本研究は自己癌細胞とリンパ球の混合培養によって誘導されるキラー細胞を用いた癌の免疫療法の実際に重要な知見を与えたと考えられる。
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