研究概要 |
研究計画(62年度)に従い, 次の4項目の研究成果を報告する. (1).聴性反応の中枢疾患に応用する場合の指標となる反応因子 : 聴性脳幹反応のI〜V波の速波成分,並びに聴性中間反応のP_0成分(すなわち,ABRの陽性緩徐波成分),それに続くNaーPa成分は皮質下疾患に対し, 特異的ではないが, 一定した, 再現性のある変化は示した. しかし聴性頭頂部緩反応のP_1成分(MLRのPa,Pbが複合している)は皮質下疾患,皮質性疾患共に再現性のない変化を示すため, 聴力検査の指標としては使用し得るが, 中枢疾患のTopotonicな診断えの応用は難かしい. N_1ーP_2ーN_2成分はテント下疾患では, 末梢性の反応成分(ABRなど)の変化に伴う2次的な変化が生ずるため 誤った情報を提供することもあるが, 明らかな皮質性疾患では, その局在性により著明な変化(特に〓中)を示し, しかもその変化は再現性を有するため,他の検査との併用により,貴重な情報を提供してくれる. (2).脳等電位圏は従来,反応の振中を指標としてなされることが大部分であるが,時間軸(潜時)を指標とすることにより再現性のあるマッピングか可能である. 現在動物実験的に中枢障害の潜時マップを試みている. (3) 聴性反応のShadow respouseを防ぐためのマスキングについて昨年度に続き検討しているが,ABRについては速波成分を緩徐波成分で,その実効マスキングレベルに差があることが判明した. (4) 幼少児のABR緩徐波成分の特徴は成人のそれと異なり,2峰性を呈することが多い. これはII波直後の陰性電位が成人のそれに比べ大きいことが原因と思われ 中枢聴覚路の発育とも関係している可能性が大である.
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